実車概要
T-35重戦車はソビエト連邦軍が1933年に正式採用した多砲塔戦車である。同国のT-28中戦車と並んで数少ない実用化された多砲塔戦車として知られる。
独ソ戦直前の1939年にはT-34等からフィードバックを受けて数両がより防護力の高い円錐形砲塔に改められた。
独ソ戦初期に投入されたものの、多砲塔戦車特有の欠陥が原因で、設計陣や軍上層部が想定していたような活躍はできなかった。
それでもT-35の存在は、(他の列強でさえ諦めていた)多砲塔戦車の量産配備を実現したソ連が、戦前からすでに「戦車王国」であったことを示す好材料といえるだろう。
スケール | 型式 | キット名称 | メーカー | 発売 | 定価 | キャタピラ | 備考 |
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1/35 | T-35A | T-35 ソビエト重戦車 | ZVEZDA | 2016年 | ¥5,500(税込) | プラパーツ組立 | <付属品>糸 |
1/35 | T-35A | ソビエト T-35 重戦車 1938年以前生産型 | HOBBY BOSS | 2015年 | ¥10,780(税込) | プラパーツ組立 | オプションの一部クリアパーツ付 <付属品> エッチングパーツ、真鍮ワイヤー |
1/35 | T-35A | ソビエト T-35 重戦車 初期型 | HOBBY BOSS | 2014年 | ¥10,780(税込) | プラパーツ組立 | 主砲塔ハッチが1つ <付属品> エッチングパーツ、真鍮ワイヤー |
1/72 | T-35A | T-35 ソビエト重戦車 | ZVEZDA | 2019年 | ¥2,640(税込) | プラパーツ組立 | |
1/100 | T-35A | ソビエト T-35重戦車 | ZVEZDA | 2014年 | ¥1,320(税込) | 一体成型 | 鉢巻アンテナ部は未再現 |
1/700 | T-35A | WWII ソビエト陸軍 T-35多砲塔重戦車&BT-5快速戦車 | ピットロード | 2002年 | ¥1,650(税込) | 一体成型 | ホワイトメタル製 各4両入り |
1/35 | 1939年型 | ソビエト T-35 重戦車 後期型 | HOBBY BOSS | 2015年 | ¥10,780(税込) | プラパーツ組立 | サイドスカート上部は長方形の最後期タイプ <付属品> エッチングパーツ、真鍮ワイヤー |
1/35 | 1939年型 | ソビエト T-35 重戦車 1938/1939年型 | HOBBY BOSS | 2015年 | ¥10,780(税込) | プラパーツ組立 | 主砲塔ハッチが2つ サイドスカート開閉部は五角形状 車体は傾斜装甲でない折衷型 なぜかエンジンカバーはクリアパーツ <付属品> エッチングパーツ、真鍮ワイヤー |
キット解説
T-35のプラモデルは8種類存在します。
そのうち1933年から1938年にかけて生産されたメジャーな「T-35A」タイプのキットが1/35が3種類、1/72、1/100、1/700のミニスケールが各1種類ずつ発売されています。各砲塔に傾斜のついた後期型、いわゆる「1939年型」はホビーボスから2つとも1/35スケールで発売されています。
ここで注意すべきは年式以外の形状変更です。
すでに触れたようにT-35は一般的に2種類に分けられますが、(多くの兵器と同様に)さらにその中でいくつか変更が加えられていることは知っておくべきでしょう。これはキット選びの際に重要な事柄の一つです。
ホビーボス社が同スケールで4アイテム販売していることがその証明ですが、それによるとT-35Aには主砲塔上面のハッチが大型で1つの「初期型」と、四角形と円形の小型ハッチが2つの「1938年以前生産型」(中期型?)に分かれるようです。
実車は6年間に渡って製造されたメジャータイプですが砲塔上面パーツ以外の差異は特にないようです。
また各砲塔が(より避弾経始に有利な)円錐形になった1939年型には通常の「1939年型」の他に、「1938/1939年型」という名称のキットもリリースされています。
これは1939年型の6両の他に1938年後半に生産された4両も円錐形砲塔を搭載していたという説があり、それを再現した製品だと思われます。
2つの構成は砲塔だけでなく、1939年型は車体側面バルジも傾斜装甲になっている一方、ホビーボスの「1938/1939年型」は砲塔のみ円錐形で、車体側面は垂直装甲の「折衷型」とでも言うべきキットとなっています。
また両者にはサイドスカートにも違いがあります。T-35は1937年からサイドスカート内部の調整を容易にするため上下が二分割されるようになりました。キットの「1938/1939年型」は1937年当初の五角形タイプ、「1939年型」は後期のより単純な形状になった長方形タイプがパーツで再現されています。
また4つのホビーボスキットのうち、「1938/1939年型」にはサイドスカート・車体の砲塔基部・後部エンジンカバーのクリアパーツが付属、なぜか「1939年型」にも後部エンジンカバーのクリアパーツのみが付属します。両製品ともオプションであり、他の部分と成形色が同じ通常の部品も付属します。インテリア再現キットではないのでどうして付属してくるのか全く不明ですが(特に中途半端な1939年型!)、内部再現したい方は記憶に留めておいて損はないでしょう。
前述のとおりT-35はホビーボスの他に、本国ロシアのズベズダおよびメタル製のピットロード(日本)の2社も製品をリリースしていますが、各社キットの形状はどうなっているでしょうか。
管理人の調べたところ、ズベズダのうち1/100スケールモデルとピットロード製が主砲塔上面ハッチ一つの初期型、ズベズダの1/35,1/72スケールはハッチが円と四角2つの”中期型”でした。またいずれもサイドスカートが上下2分割のモールドは無く、1936年まで製造された車両のようです。
わずか70両未満しか製造されていない戦車ですが、様々なバリエーションがあったことに気付けるのもプラモデルの面白さのひとつですね。
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