実車概要
1950年代はソヴィエト重戦車の決定版ともいえるT-10重戦車(開発時の名称はIS-8)が登場した一方、APFSDS弾や第二世代MBTが登場しつつあったことで重戦車というカテゴリー自体の存続が危ぶまれていた。
そこで新たな活用法が模索されて浮上したアイディアの一つに、重戦車に「核戦争への対応」を担わせるというものがあった。
このような経緯で生み出されたのが試作重戦車オブイェークト279である。
最大の特徴はその形状で、「全面核戦争下でも作戦行動が可能な戦車」をコンセプトに設計がなされている。
UFOのような流線形の車体は核爆発の熱風に耐えるためのもので、車体直下に4本もあるキャタピラが60トンの巨体が生み出す接地圧を大きく軽減していたために機動力も悪くない。
武装は本車と同時期に検討されたオブイェークト770と同じ130mm戦車砲M-65を搭載し、これはT-10の火力を上回るものであった。
このように強力な戦闘力を備えた本車ではあったが、コストが嵩みすぎるとして1960年代には開発が中止された。
T-54がT-55に改良されたように後からNBC対応能力を獲得する例は多いが、設計段階から全面核戦争を想定し、まして戦車付近で核弾頭が炸裂する状況も考慮して設計された車両は極めて珍しい。
オブイェークト279:キット一覧
スケール | キット名称 | メーカー | 発売 | 定価 | キャタピラ | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1/35 | ソビエト試作重戦車 オブイェークト 279 | PANDA Hobby | 2013年 | ¥5,390(税込) | プラ完全分割 | <付属品> エッチングパーツ メタルワイヤー |
1/35 | ソビエト試作重戦車 オブイェークト279 | Amusing Hobby | 2013年 | ¥5,500(税込) | プラ完全分割 | <付属品> エッチングパーツ |
1/35 | オブイェークト279 | TAKOM | 2013年 | ¥6,050(税込) | プラ完全分割 | 3種のバージョンから選んで製作できる <付属品> 人形1体 |
1/72 | オブイェークト 279 ソ連重戦車 (2輌セット) | TAKOM | 2019年 | ¥3,960(税込) | プラパーツ組立 | 279と279Mの2両セット <付属品> 人形1体 エッチングパーツ ロープ糸 |
1/144 | オブイェークト279 | マツオカステン | 2018年 | ¥3,520(税込) | 一体成型 | レジン製 <付属品> 半身人形1体 |
キット解説
オブイェークト279は試作段階で開発が中止された車両ですが、その奇抜な特徴のせいか妙に有名で人気のある戦車です。
そのため「オブイェークト」と名の付くソ連試作戦車の中では最もプラモデルの数が多くなっています。
キットは現在までに5つが存在し、1/35が3種、1/72と1/144が各1種のラインナップとなっています。
中でも1/35スケールは、2013年に突如として中国系の3社が相次いでキットを発売するという面白い事態が起きています(おまけに値段もほぼ横並び)。
一応言っておくとこれらは全て3社独自の新規設計であり、競合他社のOEMなどではありませんよ。
その後レジン製1/144や1/72キットも発売され、選択肢がそれなりにある状況になっています。
1/35をリリースした3社の名前を見ると、ロシアの謎の新型「アルマータ」系列をいち早く発売した『パンダホビー』、著名車両のマイナーバリエーションが得意な『タコム』、半分架空レベルの計画車両が大好きな『アミュージングホビー』であることがわかります。
いずれもマイナー兵器のインジェクションキット(ガレージキットや金属モデルでない、いわゆる普通の”プラ”モデル)を精力的に発売することで現在有名なメーカーです。
この頃から彼らの片鱗は見えていたのですね。
今後も再算的に他のメーカーが手を出せないモチーフのキットリリースを期待したいところです。
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