実車概要
ドイツ軍は敵国の装備を有効活用することで有名な軍隊であったが、大戦初期の彼らに大きなショックを与えたソビエト軍のT-34中戦車もその例外ではなかった。
東部戦線で鹵獲されたT-34は前線でそのまま使用されることもあれば、後送されて各部をドイツ軍仕様に改造された上で戦線に復帰することもあった。
とりわけ大戦前半に鹵獲された76mm砲搭載型は後者のタイプがよく見られる。
T-34/85が出現した1944年以降になると余裕がなくなったのか再塗装と識別マーク程度の変更がほとんどになった(T-34にもキューポラをはじめとする装備が標準化されたことも関係しているだろう)。
いずれにせよ、このような鹵獲戦車が両軍で多数使用されたことは、独ソ戦が史上最大の全面戦争であったことを何よりも物語っていると言える。
PzKpfw T-34 747(r) <T-34ドイツ軍鹵獲仕様>:キット一覧
スケール | 型式 | キット名称 | メーカー | 発売 | 定価 | キャタピラ | 改修点 | 備考 |
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1/72 | 76/mod.1940 | 独・T-34/76 ドイツ軍鹵獲仕様 | UNI | ¥2,090(税込) | プラパーツ組立 | 独軍仕様キューポラ 車体側面雑具箱 | 追加パーツはレジン製 <付属品>エッチングパーツ |
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1/35 | 76/mod.1941 | WW.II ドイツ軍 鹵獲戦車 T-34 747(r) STZ Mod. 1942年後期生産型 | DRAGON | 2014年 | ¥7,040(税込) | プラ完全分割 | ゲペックカステン | 製品名は1942年後期生産型とあるが「ピロシキ」砲塔 <付属品> エッチングパーツ、金属ワイヤー |
1/35 | 76/mod.1942 | Pz.Kpfw.747 T-34(r) 後期型/(ドイツ鹵獲仕様 T-34) | MSD | 2014年 | ¥4,400(税込) | プラ完全分割 | ゲペックカステン 独軍仕様キューポラ | <付属品>糸 |
1/35 | 76/mod.1942 | ドイツ Pz.KpfW.747 T-34(r) | ICM | ¥6,820(税込) | ゴム履帯 | 車体側面雑具箱 | ||
1/35 | 76/mod.1942 | T-34-76 (第2SS装甲師団`ダス・ライヒ`鹵獲版) | ARK MODELS | 2018年 | ¥3,300(税込) | プラ完全分割 | ゲペックカステン 独軍仕様キューポラ | |
1/35 | 76/mod.1942 | T-34-747(r) 鹵獲戦車 | ACADEMY | 2021年 | ¥3,520(税込) | 独軍仕様キューポラ | ||
1/72 | 76/mod.1942 | 独・T-34/76ドイツ軍鹵獲仕様1942型 | UNI | ¥1,980(税込) | プラパーツ組立 | 独軍仕様キューポラ 車体側面雑具箱 | 追加パーツはレジン製 <付属品>エッチングパーツ |
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1/35 | 85/mod.1944 | WW.II ドイツ軍 鹵獲戦車 T-34/85 第122工場製 1944年生産型 | DRAGON | 2014年 | ¥6,160(税込) | プラ完全分割 | マーキングのみ | <付属品>金属ワイヤー |
1/72 | 85/mod.1944 | WW.II ドイツ軍 鹵獲戦車 T-34/85 | DRAGON | 2017年 | ¥3,300(税込) | ゴム履帯 | マーキングのみ | |
1/72 | 85/mod.1944 +8,8cm KwK 36 | T-34戦車 ドイツ軍鹵獲車 8,8 cm KwK 36L/36付 | UNI | 2017年 | ¥2,420(税込) | プラパーツ組立 | ティーガーⅠ用ゲペックカステン 8,8 cm KwK 36 車体側面雑具箱 | 追加パーツはレジン製 |
キット解説
ドイツ軍が鹵獲したT-34、特殊車輌番号『PzKpfw T-34 747(r)』(以下747(r)とします)のプラモデルは全部で10種類が発売されています。
おおまかに分類すると76mm砲搭載型のキットが7つ(内1/35スケールが5つ、1/72スケールが2つ)、85mm砲搭載型が3つ(1/35スケールが1つ、1/72スケールが2つ)となります。
ほぼすべてのキットがノーマルのT-34に追加パーツを付与して747(r)仕様にしたものですが、再現車両によって追加パーツの内容も異なります。
例えばドラゴンのT-34/85型の2つはどちらもドイツ軍仕様マーキングが付属する以外はソ連仕様との差異はありません。
T-34/76を元にした747(r)キットはすべてに何らかのドイツ仕様パーツが付属します。一番少ないのはICM製品で車体側面の雑具箱のみとなっています。そのほかは大体ゲペックカステン(砲塔後部の雑具箱)かドイツ軍戦車と同型のキューポラ、もしくはその両方が付属してきます。
ウクライナのユニモデル社製の3つは追加パーツがどれもレジン製なので注意が必要です。
他に気になるところはドラゴンの76mm砲搭載型1/35モデルとユニモデルの85mm砲塔モデルの2つでしょうか。
前者はキット名に「1942年後期生産型」となっているものの、1942年型から採用された「ナット砲塔」ではなく、1941年以前の「ピロシキ砲塔」が搭載されています。なので勝手ながらリストの型式欄では「76/mod.1941」に分類することにしました。
後者のユニモデルキットも”くせ者”です。鹵獲したT-34 1944年型にドイツ軍がティーガーⅠ重戦車のKwK 36 8.8cm戦車砲を載せるために改造を施した車両のキット化なのですが、これは一部で実在性が疑問視されています。
当時のドイツにそのような改造をする余裕があったとは考えにくく、また軍事関係は昔から捏造写真の類が意外と多く出回っているのです。
よって、おそらく8.8cm砲搭載鹵獲T-34もその一種ではないかと考えたほうが良さそうです。
ですがそうしたいわば架空戦車を作るのも模型製作の楽しみのひとつですし、ユニモデルのキットを否定するつもりは毛頭ありません。
いちモデラーとしてはこのような怪しい(?)戦車までキット化してくれてありがとうという気持ちですよ。
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