実車概要
ソ連軍は早くもT-34の部隊配備以前から同車の改良に取り組んでおり、その過程でT-34MやT-43といった改良型が生み出された。しかしいずれも既存の戦車部隊を置き換えるほどではないと上層部に判断され、制式採用には至らなかった。
それら改良型の試作で得られたノウハウを活かしつつ、主力中戦車としてT-34シリーズをイチから再設計し直したのがT-44である。
従来の重戦車と変わらない重装甲を獲得しながらもT-34/85より軽量であり、エンジンを横向きにすることで防御上有効な低車高も実現している。また足回りはすでに技術的限界に達していたクリスティー式からトーションバーに変更され、良好な路外機動性能を持つ。
唯一大きく変わらないのが攻撃力で、T-34/85のものを小改良した砲塔に従来と同じ85mm戦車砲を装備している。ようやく制式採用を獲得して1943年に生産が開始されたものの、火力が同じことがネックとなり実戦には投入されなかった(部隊配備後の乗員慣熟訓練中に東部戦線は大勢が決していたことも関係している)。
終戦後まもなく強力な100mm戦車砲を搭載する改良型のT-54/55シリーズが登場したこともあってやや影の薄い車両だが、戦後80年近いソビエト製およびロシア製戦車はT-44の設計が元になっている。その意味で本車両の存在は戦車の歴史における非常に重要な位置を占めていると言っても過言ではないだろう。
T-44:キット一覧
スケール | 型式 | キット名称 | メーカー | 発売 | 定価 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1/35 | T-44 | T-44ソビエト中戦車 | Miniart | 2016年 | ¥7,700(税込) | フルインテリア <付属品>エッチングパーツ |
1/35 | T-44M | ソビエト T-44M中戦車 | Miniart | 2016年 | ¥7,700(税込) | フルインテリア <付属品>エッチングパーツ |
1/100 | T-44 | T-44 ソビエト中戦車 | ZVEZDA | 2018年 | ¥660(税込) | スナップフィット |
1/35 | T-44 | T-44 フルインテリア (内部再現) | Miniart | 2021年 | ¥8,800(税込) | 2016年キットをリニューアル フルインテリア <付属品>エッチングパーツ |
キット解説
T-44は有名なT-34とT-54/55の橋渡し役的な側面があり、マイナー車両の部類に属するためプラモデル数は多くありません。
それでもウクライナのミニアート社から1/35スケール製品が2点、本国ロシアのズベズダ社から1/100スケールが1点の合計3点がキット化されています。
ズベズダのものは最近人気が出てきたミニサイズのキットで、価格も昨今のスケールモデルとしては非常に安価です。元々はテーブルゲームのコマとして展開しているようですが、塗装の練習やとにかく手軽に作りたい社会人モデラーに人気のあるシリーズです。ただしスナップフィットといっても(日本製品と違って)かなり固く、一度組み合わせてしまうと砲塔を旋回させて遊ぶことなどは出来ないので注意が必要です。
ありがたいことに1/35スケールで発売してくれているミニアートは通常型のT-44と、T-54の登場以降にパーツを共通化する形で改良が施されたT-44Mの2種類となっています。主な変更点はエンジンの一部と起動輪の形状であり、フルインテリアキットなので違いをはっきりと見比べることができるでしょう。
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